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<動いて治す> |
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運動は食事療法とともに、糖尿病治療において大変重要です。特に肥満傾向にある方にとっては大きな意義をもちます。たとえ血糖コントロールが良好であっても、内臓脂肪をもっていると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞、脳卒中といった大血管障害を引き起こすリスクが高まるからです。 さぁ、それでは運動療法のポイントをお伝えしたいと思います。 参考文献 1.「患者さんとスタッフのための糖尿病 運動のすすめ」(医歯薬出版)、p22〜84 とても分かりやすい内容なので、ほんの少しだけ手を加えてまとめてみました。 2.糖尿病診療事典、第2版、医学書院、p160〜177 少し専門的な部分については、この本の内容から引用しています。 筋肉を動かすためには「燃料」が必要です。血液中のブドウ糖がこの燃料になります。 1.血糖値が正常よりも少し高めのときには運動で使われた分だけ血糖値が下がります。 2.血糖値が正常でインスリンの働きも正常のときには、運動で消費された分だけ肝臓からブドウ糖が放出され、その結果、血糖値は一定に保たれます。 3.注射したインスリンが効きすぎると、血糖値が下がりすぎて低血糖になってしまいます。 4.反対にインスリンが不足した状態で運動すると、筋肉はインスリン不足のため血液中のブドウ糖を取り込むことができず、肝臓からはブドウ糖が放出されるため、かえって血糖値が上がってしまうことがあります。少し理解することは難しい方も、こういう現象が起こるのだということは知っていてください。特に1型糖尿病や大変やせた2型糖尿病の方には大切な知識です。 血糖値は食事によって変動しますね。一般的に糖尿病患者さんの場合、食後に血糖値が上昇し、1時間から2時間でピークに達します。 従って、血糖値がピークにあるときに運動すれば、運動しないときより血糖値が早く下がるだけです。しかし、血糖値が上昇する時期に合わせて運動すれば、運動で消費した分だけ血糖値を上がらないようにすることができます。血糖値が上昇し始める食後1時間くらいから始める運動は、食後上昇してしまう糖尿病患者さんの血糖値を抑えることができます。 運動中は筋肉や肝臓に蓄えられている糖分(グリコーゲン)も燃料として使われます。ですから運動後には使った分のグリコーゲンを再び満タンになるまで貯蔵しなければなりません。この再貯蔵のために、次からの食事で増加するブドウ糖が利用されるため、血糖値は低めになります。再貯蔵の期間は運動の内容にもよりますが、運動後1日から2日くらいかかります。なので、血糖を抑える効果は運動の翌日くらいまで持続されると考えられます。 ■ブドウ糖を細胞の中に運び入れる役割のタンパク質が増えてきます ブドウ糖を筋肉や脂肪の膜を通過して、細胞の中へ取り込むためには、特殊なタンパク質(GLUT4)の助けが必要です。細胞の内部にあるGLUT4というタンパク質が細胞の表面に出てきて、血液中のブドウ糖を細胞の中へ取り込んでくれるわけです。 糖尿病の患者さん、特に肥満した方やメタボリックシンドロームを呈している方は肝臓や筋肉のインスリンに対する感受性が低く、このタンパク質が細胞表面にあまり出てきていません。このため血液中のブドウ糖は細胞(肝臓や筋肉、脂肪)の中に入ることができず、血液中にあふれてしまいます。 でも、運動をすると、インスリンの働きが多少悪くても細胞表面のGLUT4が多くなります。また運動を続けていると、細胞の中にあるGLUT4も増えてくると言われています。 運動や食事療法によって、霜降りの筋肉から赤みのしっかりとした筋肉に変わると、インスリンの働きが良くなってきます。大多数の2型糖尿病の方々は、インスリン分泌不全だけでなく、インスリン抵抗性が血糖上昇に関係しています。そのため、インスリンの働きを良くするということは、もっとも重要な運動の効果だと言えます。 実は、ブドウ糖だけでなく、脂肪も運動の燃料として使用されます。だから、運動することで脂質代謝も改善します。ただ、同じ燃料といってもブドウ糖と脂肪では大きな差があります。 「燃料に喩えるなら、ブドウ糖はガソリンで、脂肪は石炭のようなもの」です。 運動開始とともにブドウ糖はすぐに利用されますが、脂肪は燃えるまでに時間がかかります。また、運動の効果が脂質代謝の改善に現れるまでにも、一定の時間がかかります。 ○お腹の脂肪を減らします 運動をすることで体脂肪は減少しますが、このとき、特に新陳代謝が活発なお腹の脂肪(内臓脂肪)がいち早く利用されるため、内臓肥満の改善に役立ちます。皮下脂肪ではなく、お腹から痩せてくるわけですね。 ○血液中の中性脂肪を減らします。 ○善玉コレステロール(HDL−C)を増やします。 これは運動によって、悪玉コレステロール(LDL−C)を善玉に変える働きをする酵素の働きが活発になるためと考えられていますが、はっきりしたことはまだ分かっていません。 ○インスリンの効き目が良くなります 脂質代謝が改善し、霜降り状態の筋肉、膨らみすぎた脂肪細胞、フォアグラ状態の肝臓からも余分な脂肪がなくなります。そして赤身のしっかりとした筋肉、適正サイズ(小型)の脂肪細胞、脂っけのとれた肝臓では、インスリンの効き目が改善するため、糖の代謝にも良い影響が現れます。 ○動脈硬化を予防します 中性脂肪や悪玉コレステロールの減少、善玉コレステロールの増加によって動脈硬化の進行が抑えられます。 ○太りにくいからだをつくります 運動で鍛えられた筋肉では基礎代謝が高まり、安静時にもせっせと脂肪を燃やしてくれます。また、脂肪を燃焼させることに慣れた筋肉では、運動中にも速やかに糖から脂肪の燃焼へと移行しやすくなります。これらのことから、運動は脂肪を貯めにくいからだをつくると言えます。 ○運動の基本は「歩く」ことです 大きな筋肉群をリズミカルに動かす運動の代表はなんと言っても「歩く」こと、ウォーキングです。ウォーキングでは大きな筋肉が集中している脚が使われるばかりでなく、歩幅を広げスピードを上げることで、お尻や背中、腕の筋肉なども動員されます。ウォーキングは全身の運動です。 ○自転車も良い運動です ウォーキングに比べて、上半身の動きが少ないという欠点はありますが、サドルが体重を受け止めてくれるため、膝や足にかかる負担を少なくすることができます。体重が重い方や膝の痛みがある方には適した運動だと思います。 ○太った方には水泳も良いでしょう 水泳も全身を使う良い運動です。特に太った方では、陸上の運動では負担がかかりますが、水中では浮力が働くので、動きがとても楽です。膝の関節や腰に障害がある方、太った方には水泳は適した運動です。泳ぎの苦手な方は水中を歩くことをお勧めします。無理して泳ぐと息が上がってしまいます。こうした苦しくなるような運動は、糖尿病をもった方には適しません。 ○筋力づくり運動 腹筋運動や腕立て伏せ、スクワット(膝の屈伸運動)などは筋肉を発達させ、筋力を強くする運動です。筋肉はブドウ糖の貯蔵庫です。筋肉量を増やすことで血糖が上がりにくいからだをつくることができます。 ○準備運動を行いましょう! 年を重ねるとともに、また運動不足であればなおさら、筋肉は固くなり、関節の動く範囲は小さくなっています。いきなり運動を始めるのではなく、準備運動として、ストレッチなどの体操をしましょう! ○楽しく行えるスポーツも見つけましょう! ○日常の生活よりも少しだけ頑張って運動してください いつもよりも少し歩幅を広げて早足で歩く、上り道もできるだけ自転車から降りないで、少しだけ頑張ってペダルを踏みましょう!そのためには「これは、私の運動なんだ」と運動を意識することが大切です。 ○頑張りすぎるのは禁物です 歯を食いしばって、苦しさを我慢しながら運動を行うと、血液中にインスリンと反対の働きをするホルモン、つまり血糖値を上昇させるホルモンが増えてきて、かえって血糖値が上昇してしまうことがあります。また筋肉に乳酸が貯まって筋肉痛などの原因となります。 ○効率よく脂肪を分解させるための運動の強さ 中等度以下の運動では、筋肉のエネルギー源として糖質と遊離脂肪酸の両方が利用されます。でも強すぎる運動では糖質だけが分解されるようになってしまい、脂肪組織の脂肪分解が行われなくなってしまいます。この意味からも、運動は強すぎてはいけません。
○脈拍数が目安になります。 運動すると、全身の筋肉に酸素と燃料が必要になります。これに対して心臓は心拍数を増やして対応しますので、脈拍数が増加してきます。脈拍数が最大どれくらいまで増加するかということは、個人差もありますが、[220 − 年齢]程度と考えられています(これを「最大心拍数」と言います)。 運動の強さは、この最大心拍数の40〜60%を目安にすると良いと思います。 例えば、50才代の方は運動直後の脈拍数が100回/分(40%)〜125回/分(60%)になるように、運動の強さを調節すれば良いことになります。
○最低15分は続けましょう! 運動を始めたら何分くらい続けるか、これは大切なポイントです。最低でも15分間は続けてください。運動を開始して、まずはじめに使われるのは、収縮している筋肉の中に蓄えられた糖分(グリコーゲン)です。この燃料がなくなってくると、血液中のブドウ糖、つまり血糖が燃料として利用されるようになります。いいですか?ここは大切なポイントです。つまり「血糖が燃料として利用されるようになるまでには15分くらいかかる」ということです。血糖が筋肉に取り込まれていくとき、インスリンの働きも徐々に改善されていくと考えられます。だから、少なくても15分くらいは運動を続けましょう! もしも15分間続かないような運動であれば、その運動は強すぎると考えて良いでしょう! ○太っている人は30分から40分続けましょう! 痩せ形でもう体重を減らす必要のない方は15分で良いかも知れません。しかし、脂肪を減らしたいと考えている方は、もう少し長く続けることが必要です。 脂肪は貯蔵燃料であって、石炭のようなものだと言いましたね。石炭は簡単には燃えてくれません。石炭のような脂肪を燃やすためには、焚きつけ役として糖を燃やして、火がつくまでしばらく時間をかけなければなりません。この時間にも個人差がありますが、15分から20分かかると考えられています。 このため、太っている人は脂肪を燃料として利用する能力を高めるためにも、30〜40分くらいは運動を続けましょう! ○糖尿病の患者さんの血糖値は食後1時間から1時間半でピークを迎えます。従って、血糖値が高くなる少し前、つまり食後1時間くらいに運動をすると、食後の血糖値を下げることができます。この時間帯であれば、薬物療法をしている方でも低血糖を起こす危険性は少なくなりますので、運動を実施する理想的な時間は「食後1時間から1時間半くらい」ということになります。 ○日常生活に運動をうまく組み入れる工夫が大切です しかし、実際にこの時間帯に運動を実施できる人は大変限られていると思います。運動には血糖を筋肉に取り込んで直接血糖値を下げる「急性効果」だけではなく、血糖の筋肉への取り込みが良くなったり、インスリンの効きが改善したり、お腹の脂肪が減ったり、太りにくい体質をつくったり、動脈硬化を防いだり、さまざまな「慢性効果」があります。そのような慢性効果を目的として、時間帯にこだわらずに、日常生活にうまく運動を取り入れていく工夫をすることが大切です。 現代人はみんなとても忙しい生活を送っています。このため、なかなか運動する時間がとれないという方もおられると思います。こういう人たちには「エクササイズ2006」を参考にして、日常生活動作を運動消費量に換算して、1週間に23エクササイズ実行することをお勧めします。 詳しい内容は、以下のURLから「健康づくりのための運動指針 2006」をフリーダウンロードすることができますので、ぜひご覧になってみてください。 http://www.health-net.or.jp/topics/kenkouzukuri/kenkouzukuri_shisin.pdf 以上で<動いて治す>を終わります。 あまり得意でない分野でしたが、参考文献の力をお借りして、何とか最低の任を果たすことができました。 |